お育てでした…


裏庭の草むしりをした。
一雨ごと、伸びる草をずぅーっと、ほおったままにしていた。
このままでは、と決心してしゃがみこんだ。

前は草が伸びはじめたら、わりと草むしりをしていたのに、なんでかなぁ?
と考えた。
そうか!
お隣のおばあちゃんに会えなくなったからだ。

草むしりで庭にしゃがんでいたら、必ず笑顔でこうおっしゃった。
「坊守さん、忙しいのに、草むしりまでして頑張って、感心ね。
 いつもお庭がきれいで、気持ちのいいこと」
と私は、あのおばあちゃんに誉めてもらいたくて、頑張っていたんだ。
もう、あの笑顔に会えないんだ…と思うと、涙がでた。
さびしいよう、さびしい…。
あの言葉と笑顔にお育てをいただいたんだ…

お育てに感謝です!
と今はもう、住む人もいない家にむかって呟いた。

いちはつの花 咲きいでて
 我 眼には今年ばかりの 春行かんとす―――

                 正岡子規

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